スキー場では例年、骨折や脱臼などの急性外傷患者が多くみられます。
今回は現場で多く発生する四肢外傷について取り上げたいと思います。
よく発生する外傷をしっかりと押さえておくことで、現場で慌てる事なくスムーズに対応する事ができます。
上肢外傷が下肢外傷に比べ、圧倒的に多い

スキー場では下肢に比べ、上肢の外傷が多い傾向にあります。
転倒時に手をついたり、肩から落ちたりなどするケースが多い為、上肢の外傷が多いようです。
かと言って、下肢外傷が少ないという訳ではなく、
転倒時に足が過度に捻れたり、雪面に強くぶつける事で下肢を損傷する方もおられます。
そして、スキーとスノーボードで比較すると圧倒的にスノーボードが多いです。
スノーボードで滑られる際は十分に気をつけましょう。
1:コーレス骨折(橈骨遠位端部骨折)

これはスキー場だけに限らず、日常生活でも多い骨折ですね。
スキー場外傷の3大骨折の1つといってもいいでしょう。
受傷原因は、ほとんどが転倒時に手をついた時に発生します。
現場では、軽度であれば固定のみですが、転位が大きい場合は応急的に整復を行うケースもあります。
しっかりと固定を行い、なるべく早く整形外科へ受診してもらいます。
↓こちらの記事で整復法について紹介しています。
2:鎖骨骨折

こちらも比較的よく見かける外傷です。
ジャンプの着地に失敗し、肩から転倒した場合に発生するケースが多いですね。
大半が【中外1/3部】での骨折ですが、稀に【外端部】の骨折の場合もあります。
骨折部の割れ方が悪いと、第3骨片や骨折部が尖っていたりなど周囲の組織を傷つけやすい状態になっているので(外観からは分かりません)、基本整復は行いません。
クラビクルバンドなどで胸を広げた状態で三角巾で提肘し、整形外科へ受診していただきます。
3:肩関節脱臼

スキー場では肩関節脱臼は非常に多いです。
ジャンプの着地失敗で、肩から転倒して受傷するケースが多いです。
手を後ろについて受傷のケースもありますが、肩から転倒して受傷のケースがほとんどです。
脱臼は緊急を要しますので、すぐに整復してあげると本当に喜ばれます。
上腕骨近位端部骨折や神経損傷などが合併しているケースがあるので、
疑われるものは整復せずに早急に病院へ搬送します。
↓こちらの記事で整復法について紹介しています。
4:肘関節後方脱臼

肩関節脱臼ほどではないですが、しばしば見かけます。
肘周辺の外傷は、捻挫であっても痛みがかなり強いのが特徴です。
もちろん肘関節脱臼もかなり痛みが強い為、速やかに整復する必要があります。
こちらも、骨折・神経損傷など合併が疑われる場合は、緊急に対応が必要です。
↓こちらの記事で整復法について紹介しています。
5:肩鎖関節脱臼

肩鎖関節脱臼は、肩から落下して受傷するケースがほとんどです。
鎖骨外端部骨折と外観が似ているので鑑別が必要です。
基本的に緊急性がない場合がほとんどですので、しっかり固定をしてあげて帰宅後に病院受診で大丈夫です。
最後に
スキー場現場で多い外傷についてご紹介させていただきました。
すべての外傷に言えることですが、まずは神経・血管損傷や全身症状の有無等を確認し、緊急を要する外傷かどうかしっかりと判断する必要があります。
そして処置をして終わりではなく、
整形外科へ受診するまでの道筋を考えながら、処置と指導を行うのが大切ですね。